妊娠初期での出血は誰でも不安になります。一言で出血といっても色々な原因がありますから対処法もかわってきます。今回は妊娠初期で出血した時の原因や対処法などをまとめました。実は妊娠初期の頃に出血する事は誰にでも起こり得る事で、よくある事なのです。危険なものもありますが、そうでない出血もあります。緊急性のない場合も多いので出血したからといって慌てなくても大丈夫。ただ自己判断は危険なので必ず産婦人科を受診しましょう。
どんな出血だったかをメモしておく
慌てて忘れてしまったり診察の時に上手く伝えられなかったりする場合もありますからメモをとっておくと安心です。
・出血の色
鮮血だったのか茶色っぽかったのかなど
・出血量と回数
いつから出血していてどのくらいの量だったのか・何日から何回出血しているか
・出血以外の症状
出血以外の症状があるか。ある場合は、腹痛・腰痛・おりものの変化など
着床出血
着床出血とは受精卵が子宮内膜に着床した時に子宮壁を傷つけてしまい出血をおこす事をいいます。
特徴
色はおりものに血が混じったようなピンクや茶色っぽい場合もあれば生理と同じような鮮血の時もあります。量は少なく、期間は1日から1週間程度で平均は2,3日といわれています。
着床出血が起こる時期は生理予定日の1週間位前から生理予定日までに起こります。妊娠時にこの現象がみられるのは全体の約2%と少ないのですが、出血量が少ないため気が付かない人もいるようで20%位というデータもあります。個人差が大きく、まったく出血しない人から1週間位ずっと少しの出血があった人もいます。生理予定日近くに出血するので生理が始まったと勘違いしてしまう人もいますがあとで妊娠していたと気が付くようです。
着床出血と生理を見分けるのは難しいのですが、基礎体温を付けていると見分ける事が出来ますよ。高温期が2週間以上続いているのに出血した場合は生理では無いでしょう。
絨毛膜下血腫
受精卵が子宮内膜に着床すると細胞分裂を始めて栄養を血液から取り入れられるように絨毛を子宮内膜に張り巡らせていき、その時に毛細血管を傷つけ出血することがあります。少量の出血はすぐに身体に吸収されますが量が多いと血が固まって血腫という塊になるのです。妊娠初期に多く、中期ではまれですが見られる事もあります。
色は茶色やピンクとそれぞれですが鮮血が増えてきたら絨毛膜下血腫の可能性が高くなります。絨毛膜下血腫はよくみられる事ですが、不規則な生活や無理をしていると血腫が大きくなり赤ちゃんを押し出してしまうので流産の危険もあり入院になる場合もあります。血腫は安静にしていれば自然に小さくなり消滅する場合も多いのですが、無理をして動いていると刺激で大きくなってしまいますから無理は禁物です。
子宮膣部びらん
子宮膣部びらんとは、膣の奥の子宮口の辺りが赤くなっている状態をいいます。この症状は妊婦さん特有のものではありません。びらんとは「ただれている事」ですが子宮膣部びらんは炎症をおこしているわけではないのです。出血や痛みなどの自覚症状がない人もいて、月経がある女性の約80%にみられます。特に女性ホルモンの分泌が盛んな20~30代の女性に多く、閉経期になると減っていきます。
妊娠中はエストロゲンという女性ホルモンが多く分泌され、体内の血液量も多くなり出産の準備で子宮がやわからくなるので出血が起こりやすくなっています。婦人科の内診時や性交の時の刺激で出血します。特に治療をしない事が多いですが、痛みがあったり、出血を繰り返したり、おりものが増加したりした時は、洗浄をして抗生物質を投与します。
肛門裂傷
妊娠中は便秘になりやすく、硬くなった便が肛門を傷つけてしまい出血します。トイレットペーパーに少量の鮮血がついたり排便時に痛みがあって肛門付近からの出血であったら肛門裂傷の可能性が高くなります。胎児に影響はなく、妊婦さんに多い症状なので恥ずかしがらず妊婦健診の時にみてもらいましょう。
子宮頸管の腫瘍・ポリープ
子宮頸管のポリープとは子宮の入り口の子宮頸管部分に粘膜の上皮細胞が増殖してできた良性の腫瘍です。大きさは3mm~5mm位で、痛みはない事が多く、不正出血や妊婦健診で気が付きます。ポリープをそのままにしておくと感染症を起こしやすくなるので切除したい所ですが切除することで流産率が上昇するというデータもあるので慎重に治療方針が決定されます。
危険な出血
胞状奇胎
胞状奇胎とは着床後に子宮内に胎盤の組織である絨毛組織が異常増殖してつぶつぶがたくさん出来る状態で、卵子と精子が受精卵になる時に染色体の異常で卵子の核が無い、あるいは2つの精子を受精しどちらかの組織が異常増殖した場合などにおこります。なので通常の心身と同じように妊娠反応はあらわれます。通常よりつわりが重く、早い時期からおなかが大きくなったり、出血で発見される事が多いですが自覚症状がない人もいます。感染症や「子癇(しかん)」という痙攣などを起こす病気が一緒におきることもあります。尿検査、血液検査、妊娠2,3ヶ月の超音波検査で診断が可能で高齢妊娠だとリスクがあがるとされています。出血量はそれほど多くない事もあり、茶色っぽい出血が続く場合やおりものに混じっている程度の時もあります。血の塊が出た時は要注意ですぐに受診しましょう。
胞状奇胎には2種類あります。
全胞状奇胎
絨毛膜が水ぶくれのように腫れて、赤ちゃんが入るべき子宮全体が胞状奇胎でいっぱいになってしまう状態の事です。
部分胞状奇胎
一部の絨毛のみが腫れ、子宮に赤ちゃんがいるにもかかわらず、一部の絨毛が胞状奇胎になってしまう状態の事です。
子宮外妊娠(異所性妊娠)
子宮外妊娠とは本来なら子宮内膜に着床する受精卵が何らかの原因で子宮内膜以外に着床してしまう事です。着床してしまう場所はさまざまですが卵管が全体の約98%を占めています。その他は腹膜や卵巣、子宮頸管などです。子宮外妊娠では妊娠した時と同じホルモンが分泌されるので妊娠検査薬の検査では陽性反応があります。初期にはあまり症状はありませんが、週数が進むと不正出血やおなかの痛みがあり、進行するにつれて出血量も増え痛みもひどくなります。
妊娠6週頃になると超音波検査で「胎嚢」が確認されます。胎嚢が確認されなければ子宮外妊娠の疑いがあり、放置していると卵管破裂など命の危険を伴う事もあります。子宮外妊娠は予防出来ませんが、早期発見で早期治療が出来たら身体への負担も少なくすみますから、妊娠検査薬で陽性反応があったら早めに産婦人科を受診しましょう。
流産による出血
流産とは妊娠22週に至らない段階で妊娠状態を継続出来なくなる事をいいます。流産には「人口流産」(人工妊娠中絶の事)と「自然流産」があり自然流産の約8割は妊娠12週未満で起こる初期流産で、流産の原因の多くは受精卵の染色体異常です。流産になると、妊娠中に無理をした事が原因では・・と自分をせめてしまうママがいますが、染色体の異常は避ける事が出来ませんからあまり自分をせめるのはやめましょう。
まとめ
妊娠初期での出血には色々な理由があり症状もそれぞれで、慌てて病院に行かなくても大丈夫な場合もあります。出血すると「流産」という言葉が頭に浮かんでパニックになってしまいそうですが無駄に不安になるより冷静になってどんな出血だったかをメモにとり、かかりつけの産婦人科に電話して指示を仰ぐのがいいですよ。おなかの赤ちゃんが無事に育って産まれてきてくれる事を願っています!