妊娠すると気になるのが食生活ですね。おなかの赤ちゃんには胎盤を通じて栄養も、赤ちゃんには与えたくないものも渡ってしまいます。普段と違って好き嫌いが出来てしまうママもいます。妊娠初期の時期から積極的にとりたい栄養素と赤ちゃんに悪影響を与える、とってはいけない食べ物をまとめました。
積極的に取りたい栄養素
妊娠中の食事で大切なのは「バランス」です。色々な食材を色々な調理方法で摂るのがいいのです。身体にいいからといって特定のひとつだけを食べ続けるのは良くないですよ!
葉酸
葉酸が不足すると「神経管閉鎖障害」が起こるリスクが高くなります。「神経管閉鎖障害」とは脳や脊髄などの中枢神経の元になる神経管の一部がふさがり脳や神経が正常に機能しなくなる先天異常です。神経管のどこが閉鎖されるかで症状は異なりますが死産や流産になる場合もあります。葉酸を多く含む食物は海苔・納豆・モロヘイヤ・枝豆・ほうれん草・ブロッコリー・かぼちゃなどです。いちご・みかん・バナナ・キウイ・アボカドなど果物にも多く含まれていますが糖分の取り過ぎになるので食べ過ぎには注意しましょうね。
鉄分
おなかの赤ちゃんに栄養を送るためにたくさんの血液が必要になります。特に妊娠後期や臨月になると赤ちゃんも大きくなるのでより多くの血液が必要になり初期に貧血であった人は重症化してしまうこともあります。鉄分が不足するとママは身体がだるく疲れやすくなり、めまいや立ちくらみがしたり、動悸、息切れ等の症状があります。ママより赤ちゃんに優先的に鉄分が供給されるので直ちに影響がでる事はないとされていますが、胎児発育遅延・早産のリスクが高くなります。
鉄分を多く含む食べ物といって思いつくのは「レバー」ですよね。でも妊婦さんがレバーをたくさん食べるのはよくありません。レバーには動物性のビタミンAが多く含まれていてこのビタミンAを取りすぎると胎児の奇形のリスクが高まるとされています。野菜から鉄分を摂るのが理想ですが野菜の鉄分は非ヘム鉄といって吸収率が悪いのです。妊婦健診の時の血液検査で標準値を下回るような貧血であれば産婦人科から鉄剤を処方されます。自己判断でサプリメントを摂るのは控えて処方されたものを飲んだ方が安心ですよ。私も妊娠中ずっと鉄剤を飲んでいました。
鉄分を多く含む食べ物は青のり・きくらげ・焼き海苔・ごま・切り干し大根・大豆製品・あさり・しじみなどです。
カルシウム
カルシウムは赤ちゃんの骨や歯を形成するためや、筋肉、心臓の発達促進などのためにも必要な大切な栄養素です。赤ちゃんに送るカルシウムが足りなくなるとママの骨からカルシウムが血液中に溶け出して赤ちゃんに届けるので骨がもろくなり、おばあちゃんになった時に骨粗しょう症になる可能性が高くなります。カルシウムを多く含む食べ物は乳製品・小松菜・しそ・干しエビ・ブロッコリー・ごま・海藻・大豆製品です。カルシウムは吸収されにくい栄養素なのでマグネシウム・ビタミンD・ビタミンCと一緒に取ると吸収率が上がります。
マグネシウムを多く含む食べ物は大豆製品・種実類(ピーナッツ・アーモンド等)・玄米などです。ビタミンDを多く含む食べ物は魚介類・きのこ類・卵などです。ビタミンCを多く含む食べ物はブロッコリー・小松菜・キウイ・レモン・みかん・いちご・パプリカなどです。
気を付けたいもの
妊娠中にはおなかの赤ちゃんのために食べないほうがいいものがいくつかあります。危険度の高いものから順に紹介します。
リステリア菌
生肉、生乳で作られたチーズ、生野菜にはリステリア菌という食中毒を引き起こす病原菌が付いている可能性があります。リステリア菌は自然界に広く存在していて健康な人なら感染しても症状が出ないこともあるくらい軽症で済むものですが妊婦さんの場合、発熱や関節炎などインフルエンザのような症状がでる事が多く、胎盤を通し胎児に感染しすると流産・早産・死産のリスクが高まり、おなかの中で敗血症になってしまったり、産まれてからも新生児髄膜炎・新生児敗血症の原因になってしまいます。ワクチン等で予防することは出来ませんがリステリア菌は熱に弱いので食べる前にしっかり加熱することで予防することが出来ます。
トキソプラズマ
トキソプラズマは寄生虫で健康な人なら感染しても発症することはまれで、発症しても軽い風邪程度ですみ一度感染したら抗体が出来るので2度感染することはありません。でもトキソプラズマに感染したことがない妊婦さんが感染すると胎盤を通して赤ちゃんに感染し先天性トキソプラズマ症になり妊娠初期では流産や胎児死亡になるリスクが高くなります。後期に感染すると軽症で済む傾向がありますが、生まれた時に水頭症、脳室拡大、脳内石灰化、網脈絡膜炎、などの脳や目の病気になっている場合があります。
トキソプラズマは生肉や猫の糞便にいるのでお肉を食べる時はしっかり加熱をする、お肉を調理した後は調理器具や手を念入りに洗う、猫を飼っている場合は家族にお世話をお願いしたり、自分でする時は手袋をして処理後にもしっかり手を洗うなど気を付けましょう。また土の中にトキソプラズマがいる場合もあるのでガーデニングは妊娠中は避けて、どうしてもしなければならない時は手袋をして作業後はしっかり洗いましょう。
サルモネラ菌
生卵の中にはサルモネラ菌がいる場合があり感染すると吐き気・腹痛・発熱・下痢などを引き起こします。犬・猫・カメ等のペットから感染する場合もあります。サルモネラ菌は胎盤を通過しないため赤ちゃんへの感染はありませんが子宮収縮を起こすおそれがあるので妊娠初期の場合は切迫流産の危険があります。もし感染の可能性がある時は早期に治療すれば胎児への負担が軽くすむのですぐに産婦人科を受診しましょう。
水銀
マグロやカジキ、キンメダイなど大型の肉食の魚には食物連鎖によって水銀が蓄積されています。ママが水銀を取りすぎると胎盤を通じて赤ちゃんにも渡ってしまい神経系の障害がでるおそれがあるといわれています。食べて良い量は、大型の魚は2週間に切り身で1切れ位なら食べてもよいとされています。逆にサケ・アジ・サバ・イワシ・サンマ・タイなど小型の魚は積極的に取りたいですね。
動物性のビタミンA
動物性のビタミンAの取りすぎの取り過ぎは鉄分の所で書いたように胎児の奇形のリスクを高めてしまいます。緑黄色野菜に含まれるβカロテンは体内でビタミンAに変わりますが、取りすぎても蓄積されず体外に排出されるので問題はありません。動物性のビタミンAを多く含む食品はレバー・うなぎ・ホタルイカ・銀ダラなどです。
お酒とたばこ
お酒とタバコが赤ちゃんに悪影響な事を知っているママはたくさんいると思います。実際にはどんな影響があるのでしょう。お酒の飲み過ぎは「胎児性アルコール症候群」になる可能性があり症状は成長障害・精神遅滞・奇形があります。タバコは発達遅延になり流産、早産、前置胎盤、胎盤早期剥離のリスクも上がってしまいます。でも妊娠早期に禁煙すると早産率も減少するとの事なので妊娠に気がついたらすぐに禁煙しましょうね。
無機ヒ素
ひじきには有機ヒ素と無機ヒ素が含まれていて無機ヒ素は取りすぎると胎児の奇形のリスクを高めてしまいます。たくさん食べなければ問題ないとの事ですが、ひじきに含まれている鉄分と葉酸は他の食品でも摂る事が出来るので妊娠中は避けた方がいいかもしれませんね。
ヨウ素(ヨード)
ヨウ素(ヨード)は海藻類に多く含まれ、人にとって必要不可欠なミネラルの一つですが取りすぎるのはよくありません。妊娠中にヨウ素を多く含む海藻類(昆布・わかめ)を取りすぎるとママには甲状腺機能低下症や甲状腺腫などの症状がでる場合があります。おなかの赤ちゃんにもクレチン症という生まれ付き甲状腺の働きが悪く甲状腺ホルモンが不足する病気になる可能性があります。ママの甲状腺機能に問題がなければ赤ちゃんも大丈夫ですが心配なら妊婦健診の時に検査して貰うことも出来ます。
カフェイン
カフェインを妊娠中に摂るのはよくないと聞いたことがあると思います。どんなリスクがあるのかというと胎盤や胎児はカフェインを分解できず発達遅延のリスクが上がり、低出生体重児になる可能性があります。1日に取って良い量は濃さにもよりますがコーヒーなら1日に1~2杯程度です。
まとめ
妊娠中に食生活についてまとめてみました。情報を知って気を付けることは大切ですが、今まで食べた物を心配しすぎるのは身体によくありません。どうしても心配な時は検診の時に医師や助産師に相談しましょうね。