妊娠中のマタニティライフや、出産を終えて、早速始まった赤ちゃんのお世話中心のママライフのなかで、ママを悩ませる症状が色々あります。その中で、皮膚に関するトラブルで悩んでいるママも多いようです。妊娠中、手足や体のいたるところに、強いかゆみをともなって発症する皮膚の疾患に「妊娠性掻痒症」、「妊娠性痒疹」や「妊娠性疱疹」などがあります。かゆいのを我慢できずにかいてしまうと、肌が傷つき更にかゆくなる悪循環に陥ってしまいます。では、妊娠中・産後に湿疹や皮膚炎が起こりやすくなる理由と、発症した際の対処法について調べてみましょう。
妊娠中や産後に発症しやすい皮膚炎とは?
妊娠後期のころから、急に身体が熱くなり、身体中が痒くて眠れない日が続きました。妊娠中だけのことと思い、我慢してきましたが、出産後も一向に治まりません。現在も特に夜になると身体がほてり、頭や背中が痒くてたまりません。この痒みは出産と関係があるのでしょうか。
★蕁麻疹と湿疹のちがい
産後は体内のホルモンバランスが急激に変化したり、免疫の状態が大きく変化したり、疲れやストレスで抵抗力やお肌のバリア機能が低下したりしているため、蕁麻疹や湿疹といった肌トラブルが起きやすくなります。アレルギー体質や敏感肌ではなかった人でも、産後に突発性の蕁麻疹や湿疹が出ることもあります。
蕁麻疹とは、かゆみを伴う赤い腫れが身体の一部にできる病気です。通常は数十分~数時間で症状が治まるのですが、原因が特定できないまま、1ヶ月以上出たり消えたりを繰り返すこともあります。
湿疹とは、皮膚炎ともいい、かゆみを伴う皮膚の炎症です。数日~1週間以上消えずに続くことが多く、症状がひどくなると、水ぶくれ状になります。水ぶくれが破れて、皮膚がジュクジュクになってしまうこともあります。
★妊娠性掻痒症とは
妊娠中期から後期にかけて全身に強いかゆみの起こる症状で、特徴としては、全身がムズムズしたり、チクチクと刺されるような強いかゆみをともないます。しかし妊婦さんの全身状態は良好で、皮膚表面に発疹などは特にありません。
分娩から24時間以内にはかゆみが治まるケースがほとんどです。しかし、かゆみに耐えられず掻き壊してしまうと、そこから二次的に感染症が起こって発疹や一定範囲にぶつぶつができたり、色素沈着などが生じる恐れがあるので、掻き壊さないようにしましょう。
★妊娠性痒疹とは
初産よりも2回目以降の妊娠に多く、妊娠3~4か月頃から出現しはじめ、出産まで続きます。手足や体のいたるところに局所的に発生する発疹のことで、強い痒みを伴います。1cm以下の円形・楕円形・多角形などいろいろな形をした皮膚の盛り上がりができます。
腕や下肢を含め、身体中いたるところにできる小さな発疹で、最初は部分的に出現し、徐々に身体中に広がっていきます。強い痒みを伴うのが特徴で、痒みのために夜も眠れなかったり、無意識のうちに血が出るほど掻きむしってしまう人もいます。また、痒疹がストレスや不眠につながることもあります。
★PUPPPとは
妊娠性痒疹と異なり、初回妊娠で妊娠後期に現れるものを「多形妊娠疹(pruritic urticarial papules and plaques of pregnancy: PUPPP)」と呼びます。
腹部を中心に、蕁麻疹のような紅斑が腹部を中心に四肢などにも出現し、一つひとつが赤同士融合して環状、地図状などになり大きくなることも。こちらも、強いかゆみをともないますが、出産後急速に消退するのも特徴です。
★妊娠性疱疹とは
妊娠中または分娩後に発生する、自己免疫性の水疱症です。強い痒みをともなう浮腫性の紅斑ができ、広がっていくのが特徴です。紅斑の中に水疱ができます。
妊娠中や産後湿疹の原因は?
出産を終えたばかりの女性の身体は、かなりのエネルギーを消耗し、体力や免疫力が低下しています。また、産後はホルモンバランスが急激に変化するため、体調や肌質もゆらぎやすく、育児疲れにともなうストレスや寝不足も重なって、抵抗力が低下し、肌のバリア機能も低下してしまうことで、湿疹・皮膚炎を発症しやすくなるのです。
また、妊娠性掻痒症は、妊娠によるホルモン分泌の変化に加えて、皮膚の乾燥が原因と考えられます。妊婦さんは、特に女性ホルモンの分泌が増加する分、相対的に男性ホルモンのバランスが低下し、乾燥しやすい状態になりやすいのです。さらに、原因として特定の病気、例えば慢性腎不全、肝疾患、糖尿病、悪性リンパ腫、精神神経疾患などが潜んでいる可能性もありますので注意しましょう。また、遺伝的要因が関係する場合もあるようです。
妊娠中や産後湿疹の対処法は?
湿疹はかゆみを伴う症状が出るため、かゆみが強いとついつい搔いてしまいますが、できるだけ我慢してください。掻くことが刺激になってさらにかゆくなるという悪循環を起こします。搔いて皮膚に傷がつくと、傷口から雑菌が繁殖してそこから細菌感染が起こり、症状がひどくなるかもしれません。悪化して慢性化すると治りにくくなるので、症状が出た場合には早めの対処が必要です。
湿疹は放置すると、治りにくくなるので、早めの対処が大事です。病院では治療のために、授乳中でも使える軟膏などの薬が処方されます。授乳中に自己判断で薬を使用するとかえって悪化させてしまったり、赤ちゃんに悪影響を及ぼす薬を、誤って赤ちゃんが口に入れてしまっては大変です。皮膚科医、薬剤師などの専門家に相談したうえで、適切な医薬品を使いましょう。
免疫力や肌のバリア機能を高めるためには、バランスの良い食生活も重要です。睡眠不足や育児のストレスも免疫力に影響するので、家族や周りの人に協力を求めるなど、上手に解消できるように工夫しましょう。
一番確実なのは専門医を受診することです。湿疹だと思っても、ごくまれに他の病気が隠れている場合もあります。急に症状が出たり、かゆみが強いような場合や、セルフケアで改善しない場合には早めに皮膚科を受診しましょう。
痒い時のセルフケア
●すぐにかゆみを止めたい場合は、氷水で患部を冷やして、かゆみを和らげましょう。
●肌が乾燥を防ぐため、授乳中でも使える、天然成分から作られた保湿クリームを使って、肌の乾燥を防ぎましょう。
●夏は湿度が高くなりすぎるので、除湿器やエアコンを利用したり、汗をかいたらすぐに拭き取ることでかゆみを軽減させることができます。
●冬の時期は乾燥しやすいので、加湿器を使ったり部屋干ししたりするのも効果的です。
●産後に低下してしまった免疫力を上げるために、栄養バランスのとれた食事をとりましょう。
●育児疲れやストレスが原因で蕁麻疹や湿疹が起きている可能性もあります。旦那さんや家族に協力してもらい、思い切って休む時間を作ったり、趣味に没頭したりして、心身ともに休ませましょう。
まとめ
100人に1人程度の割合でみられるといわれる「妊娠性痒疹」は、蕁麻疹の症状と似ているため、よく間違ってしまう方が多い皮膚疾患です。そのため、蕁麻疹と同じ対処法では改善できなかったり、間違った処置は悪化させてしまう場合があるので注意が必要です。
身体のかゆみが止まらない、排尿のたびに痛みを感じるなど、体調面で少しでも心配な点があったら、放っておかず医師に相談しましょう。毎日子育てで大変だと思いますが、赤ちゃんにとって元気なママが必要なのです。どうしても後回しになってしまいがちな自分の身体のケアも、意識的に取り組みましょう。忙しくて受診するのが難しい場合は、1ヶ月検診などで産婦人科を訪れた際に医師に相談してみましょう。