毎年12月~3月になると流行を繰り返すインフルエンザ。インフルエンザはインフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症で、特徴として急な38℃以上の発熱、喉の痛みや咳、頭痛、関節痛や筋肉痛、倦怠感などの症状が現れます。特に発熱は2日~4日ほど続くことが多く、辛い日々が続きます。

インフルエンザにかかってしまったら病院で抗インフルエンザ薬という治療薬が処方されますが、今回はそのインフルエンザ治療薬の1つである「イナビル」についての効果や特徴、使い方や副作用について詳しく調べてみました。

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インフルエンザ治療薬イナビルの特徴は

イナビルとは

イナビルは吸入型のインフルエンザ治療薬であり、2010年10月に国内で初めて開発され第一三共株式会社が製造販売しています。吸入することにより、ウイルスの増殖部位であるのどや気管支に直接薬が届いて、ウイルスの増殖を抑え効果を発揮します。

最大の特徴といえるのが、吸入が1回だけで済むことです。5日間使わなければいけないタミフル(経口薬)、リレンザ(吸入薬)と大きく異なり、うっかりして飲み忘れてしまう心配がいりません。

イナビルの効果とは

イナビルの正式名称は「ラニナミビル」で、商品名がイナビルになります。イナビルはA型とB型インフルエンザウイルスの治療と予防に使われています。1回の吸引でその効果は5日間持続します。

イナビルはタミフルやリレンザ、ラピアクタと同様にノイラミニダーゼ阻害薬とよばれる薬の1つです。インフルエンザウイルスが体内の細胞に侵入してしまうと同じウイルスのコピーを細胞内に複製します。その後、複製されたウイルスは別の細胞に放出されていきウイルスはさらに増殖していくのですが、その際にウイルスが持つ突起にある酵素「ノイラミニダーゼ」は感染した細胞の膜を破る働きがあります。

イナビルなどのノイラミニダーゼ阻害薬は、ウイルスのノイラミニダーゼの働きを阻害し、インフルエンザウイルスを細胞内に閉じ込めて増殖させないように作用します。

インフルエンザウイルスのが体内に入るとその増殖スピードは非常に早い為、1個のウイルスが24時間後には100万個にまで増殖するといわれています。その為、できるだけ早めに服用することが大切です。適切な時期(発症から48時間以内)に服用することで発熱期間を1日~2日ほど短縮させ、のどや鼻からのウイルス放出量が減っていきます。

症状がでてから48時間以上経過してしまった場合は十分な効果は期待できない為、インフルエンザが疑われるような症状がでた場合は早めに病院に行きましょう。

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インフルエンザ治療薬イナビルの使い方は

イナビルは1本に20mgの白色の粉末状の薬剤が入っていて、薬が入った容器を直接口に加えて吸入します。

10歳以上の子供と成人2本

10歳未満の子供は1本

つまり、10歳以上の子供と成人は2容器、10歳未満の子供は1容器を1回吸入するだけで治療が完了します。

イナビルの吸入方法の動画は、第一三共株式会社のサイトに紹介されています。

10歳以上の方のイナビル吸入方法

10歳未満のお子様のイナビル吸入方法

イナビルは吸入薬の為、経口薬と異なり服用が難しい薬剤です。その為、薬局で薬剤師さんの指導を受けながら服用することもあります。我が子も、今年の1月にインフルエンザを発症し、イナビルを処方してもらいました。薬局で薬剤をもらい薬剤師さんの指導を受けながら何度か繰り返し吸入をしました。薬剤師さんの話によると、大きく吸い込むことがコツのようで、最初から上手くいかないお子様も多いとのことでした。

もしも吸入に失敗してしまったら?

薬剤師さんの指導を受けながら吸入をする場合はあまり失敗が少ないといえますが、自宅に戻ってから吸入する場合、薬剤を全量吸入できたかどうかわからずに吸入を終えてしまったり、吸入後に息を2、3秒止めずにすぐに息を吐き出してしまったり、吸入口に大きく息を吹きかけてしまったなんてこともあります。

イナビルは、量の半分くらい吸い込むことができていれば効果は十分あるといわれていますので、あまり神経質になりすぎる必要はないようです。

インフルエンザ治療薬イナビルの副作用とは

イナビルの臨床試験や実際の治療による副作用が報告されています。

下痢、はきけ、めまい、胃腸炎などが主な副作用になります。もしもそのような症状が現れたら薬剤師や医師に相談しましょう。

また、稀ですが重大な副作用が現れることも報告されています。ショックやアナフィラキシー様症状です。呼吸困難、蕁麻疹、血圧低下、顔面蒼白、冷や汗をかくなどの異常がみられる場合、ショックやアナフィラキシーの初期症状である可能性があるため、ただちに服用を止めて医師の診察を受けましょう。

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インフルエンザ治療薬イナビルの注意点

イナビルを服用する上で注意しないといけないことがあります。

乳製品アレルギーの方は注意

イナビルとリレンザに関しては、乳蛋白を含む乳糖水和物を使用しており、乳製品に対して過敏症の既往歴のある患者に投与した際にアナフィラキシーが現れたとの報告があります。牛乳アレルギーの場合は乳成分に含まれるタンパク質に反応してアレルギー症状を起こすといわれています。

一方、乳糖水和物は薬に使用される場合、賦形剤(ふけいざい)としてかさ増しや、甘味があるため飲みやすくするために使用されます。乳糖不耐症の場合、下痢を起こすことがあります。

いずれにせよ、乳製品アレルギーがある方は必ず医師に伝えましょう。

異常行動が報告されている

同じインフルエンザ治療薬であるタミフルで異常行動が報告され話題になりましたが、イナビルでも処方され服用した10代の患者さんの転落死が報告されています。ただ、インフルエンザ治療薬を服用しない状態でも異常行動の発現は報告されているため、異常行動とインフルエンザ治療薬との因果関係は不明のままです。

しかしながら、転落死などの事故を予防する為に、インフルエンザ治療薬を服用した後2日間は、小児や未成年者が1人にならないよう保護者が見守ることが大切です。

妊婦や授乳中の方は大丈夫?

妊娠中の方が治療にイナビルを服用した場合、お腹の赤ちゃんに影響は無いのでしょうか?

日本産婦人科学会は、2012年と2013年に妊婦112名に対して行った調査によると、妊娠中にイナビルを治療のために服用した妊婦の出産後の赤ちゃんに流産、早産、胎児形態異常などの事象は増加しなかったと報告しています。

日本産婦人科学会のお知らせ

イナビルが妊婦に対して安全であると結論付けられてる訳ではありませんが、インフルエンザにかかった場合にイナビルを服用するかどうかは医師の判断に委ねられます。

また、授乳中の方にイナビルを服用した場合、母乳を介して赤ちゃんに薬の成分が移行するのでしょうか?

第44回日本小児臨床薬理学会で発表された報告によると、インフルエンザに感染しイナビルを投与された授乳婦5人の母乳中の薬物濃度を測定したところ吸入後1~46時間の母乳において5人とも検出限界未満だったと示されています。イナビルは服用が1回で済む為、薬剤が母乳に移行したとしても比較的短時間であり、安全性が高いことが推測されます。

また、授乳中に母乳から赤ちゃんに移行する薬について詳しく紹介されたサイトがあります。殆どのくすりは母乳に移行するけどその量は少ないといわれているそうです。

国立成育医療研究センター:授乳とお薬について

なお、妊娠中の方も授乳中の方も、自己判断ではなく必ず医師と相談してから薬の使用・中止を行ってくださいね。

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まとめ

イナビルは吸引するタイプのインフルエンザ治療薬で、1回の吸引で治療が簡潔します。たった1回の使用で効果は5日間続き、飲み忘れを防ぐ反面、服用が少し難しくなります。

服用する際は、特にお子様の場合は薬剤師の指導を受けながら行うのが良いでしょう。また、少ないのですが下痢などの副作用が報告されていることと、乳製品アレルギーのお持ちの方は医師に伝えるようにしましょう。

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